ローカルハンター ヒロ

全国を旅しながら農業や田舎の情報発信をしていきます。

JAPAN AGRI 2.0 ver.1

今年の冬は例年にない寒さである。

今、生活している周防大島では、雪景色を見られるのは非常に珍しいらしい。
海岸に積もる雪景色は言葉にできないほど絶景であった。
しかし、美しさを現出する自然は時として我々に鋭い牙を剥く。
話題になっているのは日本海側での降雪の被害である。
交通インフラへの支障を始めとして、甚大な被害が各地を次々に襲っている。
その中に、もちろん農業も包含されている。
経費の掛かるハウスの倒壊や農作物が雪に埋もれて傷み、出荷できないといった被害が起こっている。スーパーでの農作物高騰が印象強いのではないだろうか。

日本の気象や経済体制、政治情勢などがここ数十年で大きく変わりつつある。
印象に強いのが、「グローバル化」であろう。
TPPや温暖化などの影響で、今まで培われて来た農業の常識が壊れつつある。
人口減少による担い手不足、マーケットの縮小も相次いで進行している。
様々な社会問題が農業を始め、日本の産業に大打撃を与えている。

緩やかな農業ブームが起きている今、日本の農業はこれからどうなっていくのだろうか。
ここで僕は3点、日本の農業がどうなって行くのかを考察した。

 

 

 

①緩やかな個人主義の元で直接金融による資金調達へ。

 

 


昨年2018年はファイナンスの大きな変革期であった。
特に仮想通貨の興隆は、10月に参入した自分ですらも2ヶ月間で非常に大きな変化を体感した。芸人の出川さんがCCのCMに登場し、一気に広まったのも記憶に新しい。
またVALUやTIME BANKの目覚ましい台頭から見て取れるように、「個人」という単位で資金を調達できるようになった。
この緩やかな個人主義の元で、農業経営者が個人で資金を調達し、農業を始めるモデルもこれから徐々に出てくるだろう。今まで間接金融による銀行の投融資や政府あるいは行政からの補助金資金援助を受けることが主流であった農業界において、今後数年で資金調達において大きな変化を遂げて行くだろう。
ここで忘れてはならないのが、ただ畑を耕して販売するだけでは不十分であるということである。何らかの社会貢献が伴っていなければ、また投資家に可能性を感じさせられる人格が伴っていなければならないということだ。
農業界におけるファイナンスの変化も今後めまぐるしく変化していくだろう。

 

 

 

多品種少量生産から多品種大量生産へ。

 

 

 

日本の農地区画は他国と比較して圧倒的に狭く、大量生産型農業には向いていない。
また、最近では休耕地の利活用、リスクマネジメントも兼ね合わせて作物を多品種栽培するようになった。
これまで少品種少量生産から多品種少量生産の変遷が進んできた。
先日の農業研修で「今は多品種大量生産に切り替わりつつあるよ。」という声を聞かせていただいた。
これから組織化することで地域単位で大量生産を促す仕組みが各地域で起こるようになるだろう。土地や水利権を接収し、少数の意思決定により地域農業を動かす、農家のM&Aも始まっていくのだろう。実際に農業法人の増加や農業への大企業資本投下など組織化の動きは顕在化している。
しかし、ここでもう一度考えなければならないのは地域における人材と環境、そして文化伝統といった「多様性」の保護である。
先日、資本主義化する農業への危険性について述べさせていただいたが、このままビジネス化が蔓延していけばたちまち日本農業の多様性は失われていくだろう。それに併発されて食糧安全保障を脅かしたり、今まで積み重ねてきた日本の農業史消失しかねない。現に日本の棚田や段々畑はスピードを上げて荒廃しつつある。
地域の多様性を尊重しながら緩やかな組織化をすることによって、しなやかで強靭な地域農業を創り上げていくのがベターであると思うが、どのような組織化が進んでいくのか、今後の動向が気になるところである。

 

 

 

③農業の常識が崩壊する。

 

 

 

先の東日本大震災をきっかけに多くの人が「幸せとはなんだろうか」と問いただしたのではないだろうか。
とほぼ同時期に地方創生の機運が高まり、「生きることの豊かさ」を求め地方で就農する人が緩やかに増加していった。やり方さえ工夫すれば稼げる、「農業ブーム」が到来したのである。稼げない、しんどいからやめておけと言われ続けてきたこの産業に遂に夢見れる時代がやってきたのである。
それから約7年が経過した。
基盤を整え稼げる仕組みを確立した農家のモデルケースが徐々に現出し始めるだろう。先の仮想通貨にもあるように、成功例がメディアに取り上げられ始めるとそちらへ流れが大きく傾く傾向にあるのがよく分かった。
これからそのモデルが増加し、大衆へ発信されるようになると参入者は増え、マーケット内の競争激化、そして土地の奪い合いが激化していくだろう。作物の質は土地で決まるといっても過言ではない。
今まで塗り上げてきた農業がまた違う色に塗り替えられる日もそう遠くはないだろう。

 

 

 


漠然とした未来の農業について考えていたことを書き起こした。
ただ、今こうしてすぎる1秒1秒にも農業は変化しつつある。
今回はver.1ということで、今後も改訂していきたい。

農業の面白いところは、「誰にも真似できないモノを作れる」こと。
製造業のように日夜追いつき追い越せではなく、長い時間をかけて自分色に染めることができる。生産者によって同じ作物でも味に違いが出るのである。

そんな未来に無限の可能性を秘めているこの「農業」という分野で僕は勝負をしていきたい。