地域に馴染むその時まで
「地域に移住すると色々な人から野菜や魚をもらえる!」
移住関連の広告や話題でよく聞く文言である。たしかに、僕の地元でもみかんは買うものではなくもらうものとよく言うし、何か困った時にはその道の人に連絡して相談してくれるし、与えてもらうことはとても多い。
なぜこの関係が持続するのだろうか、と度々疑問に持つことがある。その答えは先日の農家さんの一言にあった。
「家に帰ると、誰からは知らんが野菜や魚が玄関にポンと置かれていることがある。だけどそれが誰からのものか分からないから、近所一帯にブロッコリーや何かしらあげるようにしている。」
新たに地域に入ると、最初は物珍しさやその人がどう行った人なのかを探るために、何かしら地域へのもてなしを受けるかもしれない。沢山の地域で取れる新鮮な作物など、魅力的なものばかりで本当に喜ばしいことである。しかし、それだけでは到底は持続的な関係は築けない。自分が生み出したもの、つまりこの農家さんは誰かから受けた恩を自分の生み出したもので返す、これが継続して循環する環境を生み出しているのである。
GIVE and TAKE の関係は非常に重要である。ただ、その行為は同時に行われるものでなくても大丈夫。春に旬のたけのこをもらえたのであれば、自分が夏が旬のキュウリをおすそ分けすればいいだろう。自分のタイミングで出来る範囲でされたらお返しする文化を創ればいい。
最後にその農家さんは静かに語る。
「自分たち移住者が地域に根付いたということは、自分がしたことその地域に生かされることなんだよ。自分の作るモノがその地域の人に味わってもらって喜んでもらえる、その時にようやく地域の一員として認められるんだ。」
改めて言うが、何かを作ってあげるということに躍起にならなくてもいい。むしろそう思っているうちはまだ「お客さん」なんだろう。主体的と自主的の差だ。自分の思いを込めたものをあげたいと思えるその時まで。